それは、輝く星空のように
羽田智徳の価値基準
11月半ばを過ぎた夜。


忙しく人が行き交う大都市・成田。


その街の隅にある、ガードレールの下。


そこでは、悪の取引が行われたりする。たまに。


羽田 智徳(はねだ とものり)は、壁に背を預けていた。


黒髪に、整った顔立ち。


スーツの上にチェスターコートを羽織る姿は、やり手のサラリーマンのようだった。


しかめ面で待ち人を待つ。


「あの」


高校生ぐらいの少女が、智徳に声をかけてきた。


黒いショートカットに、地味な服装。


化粧っ気のない顔が、この街では浮いているように思えた。


――またこのパターンかよ。


智徳は、心のなかでため息をついていた。


話に聞いていたとは言え、いざ目にすると落胆してしまうものである。


「何かな?」


魅力的で柔和な笑みで返す。


先に言っておくが、智徳は人間嫌いだ。


それでも営業スマイルを欠かさないのは、仕事だからである。


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