鎧~ヨロイ~
ホントの自分は。。。
ホントの自分は、誰も知らない。
お父さんも、お母さんも、弟も、同僚も、友達も――。

『ちょっと早いけど、産まれました!』
私は今日、晴れて叔母さんになった。

そんな悲しみと、新たな命が誕生した喜びが混在する中、会社の飲み会に参加している私がいた。
飲んでも飲んでも。心の中では“あのこと”が常に引っかかっており、酔うに酔えない自分がいた。
タイミングがいいというのか、悪いというのか、こんな日に、こんな飲み会があるなんて。

私も、あっという間にそんな歳になっていた。そして今日、私は生まれてから30年と9日目にして『おばさん』になった。そんな私の“心の闇”を誰も知らない。

そんな“心の闇”を抱えることになってしまった私は、白衣の天使だ。常に患者を第一に考えて行動し、Dr.を立てて立ち回り、病棟に何人もいる、未来の私かもしれない先輩(お局)ナースを敬っている“ふり”をする。そんな生活が、気付いたら8年も過ぎていた。

仕事、仕事の毎日で、プライベートを充実させることを忘れていた。
弟からびっくりすることを聞かされた私は、そんな毎日を疑いもなく送っていた、『未来はお局』ナースだった。

『お姉ちゃん、今度、結婚するよ』

私が、何年か想い続けたDr.から振られた翌日だったっけ――。

そのとき、本当に頭が真っ白になった。とにかく、弟におめでとう、なんて言う余裕はなく、『早く結婚しなきゃ』と思った。

今すぐ結婚してくれそうな人全員に連絡を取った。もちろん、私の心の焦りはひた隠しにして。
でも、そんなこともすぐに虚しくなり、返事が来ても、無視ってしまい、結局実りはなかった。

それからは、自分の生きる意味を考えた。
私が、この世に生まれた意味を考えた。
でも、そんな大それたものが、すぐに見つかるはずもなかった。

すでに、生きる意味を見失ってしまっていたから。



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