秘密~「ひみつ」のこと
「君の子なら、産んだらいい…」

夫の口から出た言葉に、
耳を疑った。

産んでもいい?

なんで何も聞かないの?

誰の子だとか?
どうしてこういうことになったんだとか?

あたしに、
何を期待してるの?

あたしは夫に、
何を期待してたの?

それでも、
あたしの中で
子供はどんどん大きくなっていく…

会社を辞め、
情緒不安定のまま臨月を迎え、
和徳が生まれた。

あたしはそれ以来、
専業主婦。

家庭の守り人。

それが夫があたしに課した、
役割。

和徳に罪はないって、
わかってる。
罪を背負わなくちゃいけないのは、
あたし。

でも時折、
この子さえいなけりゃって、
気持ちがかすめる。

あたしが
そんな事考えて難しい顔をしてると、
和徳がおどけてあたしを笑わせる。

あたし、
笑顔はつくれないけど
和徳の笑顔に、
救われる。

強張った顔の下で、少しだけ癒される。

この子がいるから、
あたし、
頑張れるのかもしれない…

この子の笑顔が
あたしの救い…







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