『鏡の中のマリア』

疑惑

私達はその足で
病院に向かっていた。

市役所から病院までは
歩いて20分くらいだった。

歩きながら暁生に
死亡診断書なんて
何で知ってたかと尋ねると、

「俺が小6の時に
親父が家で死んで、
その後、医者呼んで
診断書を作ってもらわなきゃ
いけなかったから、
それ思い出したんだ。

区役所で何年間か保管される。
保険金殺人とかあるっしょ?
その時とか調べるんじゃないのぉ~」

私は暁生のことを
初めて聞いた気がする。

『お父さん・・・病気で?』

「ん~ん、家で首つったの。」
サラリと言われたその一言に
言葉を失う。

「何?平気だよ(笑)
さすがにそん時は落ちこんだけどね。」
と明るく言う暁生。

『お母さんは?』
よっぽど私が
心配顔で言ったのだろう。

フッと笑い、
「生きてるよ。」




私は暁生の明るさが
羨ましくなった。

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