鬼畜王子の飼育方法


ダメって──…


「遠いしやめといたほうがいい。高いわりに味微妙だし」


「ちょっ…志季先ぱ、」


「とにかく、他にしよう。それに俺、今洋食な気分じゃないんだよね」


…はぁっ!?

さりげなく自己中発言してますよこの人。


しかも、自分のお店なのに味が微妙だなんて──。

店長が聞いたら泣いちゃうよ。

ほんと志季って、無神経!


「…そうなんですか。残念。じゃあ他のところにしましょう!」


「だな」



あーあ……

二人共テンション下がっちゃったよ。

もしこれから場の空気が悪くなったら、志季のせいだ。





結局、駅前に最近新しくオープンしたというお好み焼き屋さんに行くことにした私たち。

再び前を歩き出す二人を見計らって、私はキッと志季を睨みつけた。


「志季先輩、なんであんなこと言ったんですか?」


「あ?何がだよ」


「高いとか微妙とか!自分のお店なのに。しかも、距離だってここから歩いて5分じゃないですか。何で遠いとか嘘までつくんですか?」


出来るだけ声を潜めながらも、いっきにまくし立てる私を、志季はただ黙って見下ろしたまま。


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