嘘恋
「沙織、最近、…」

沙織はマツからの言葉が…怖かった。

「マツくん、どこ行ってたの?」

「あぁ、友達んち。スケボーしてたよ」

「そっか」

「沙織は?」

「あたしも、千恵と遊んでたよ」

会話が弾まない。

前に 朋久と一緒にきた公園。

「旅行、いつがいいかなと思ってさ。車借りれなくてさ……。俺の友達カップル一緒でもいい?」

「うん、いいよ」

沙織はむしろ ふたりきりじゃないことが 救い…だと思った。

「ゴメンね…、友達、イイヤツだから、大丈夫だとおもう」

「うん、気にしてないよ。来週末以降ならいつでもいい!」

「わかった、じゃあ早めに決めるわ」

「お願いします」

沙織は そろそろ戻らないと、と マツに伝えた。

別れ際 マツは 沙織を抱きしめた。

「ん、…」

マツは、沙織にキスを した。

沙織は、ホンの少し 応じると 唇をずらした。

マツの 腕の感触が…

つい こないだまでは 居心地よい場所だったのに。

「沙織、好きだよ…」

沙織はマツの腕の中で なんとも 居心地の悪い感覚に なっていた。

マツを見送ると部屋に戻る。

ベッドにダイビングした。

あぁ…。

あたしは、何をしてんだろうか…。

自分が かなり 最低なのじゃないかと。

こんなときに限って 長い春休み。

時間がたくさんあると、たくさん考える時間が増えてしまう。

マツに伝えなくちゃ…。

沙織の答えは だんだん はっきりとしてきた。

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