嘘恋
マツは次の瞬間、沙織の頬を殴った。

「マツ、止めて……」

「ヤラセロ。…そしたら別れてやるよ…」

マツは無機質に、沙織の耳元で囁いた。

「…最低…マツ…」

「そのまま返すよ、その言葉」

マツはニヤリと笑うと、行為を続けた。

今 沙織が騒げば 犯されずには 済んだろうが…

こんなことがあったことを 千恵や 朋久に しられたくなかった。

ホンの少しの間 我慢してたら 終わる…

沙織は めをつぶった。

どれくらい 経ったろうか。

マツはジーンズを履きおえると

「ホントのこと教えてやるよ」

沙織は ききたくもなかったけれど

マツが 勝手に話すのを 聞いていた。


全て 聞き終わったあとに、マツは

「じゃあな。やっとデキタわ」

部屋をでていった。

沙織は、ようやく 悲しさと悔しさで 涙が溢れてきた。


向かい側の家から

千恵と朋久は 沙織の家の様子を伺う。

マツだけ 出て行くのを 確認した。

千恵は 沙織の携帯を鳴らすが 留守電になってしまった。

千恵は朋久に 少し待っていてと話すと 沙織の家に向かう。

「こんにちわー、ちょっとおじゃましまーす」

千恵は こっそり 2階へあがる。

沙織の部屋へ入る。

ベッドのうえの 沙織の姿を見て 状況を把握した。
「大丈夫、大丈夫…」

全然 大丈夫じゃないけれど 千恵は 沙織を抱きしめた。

「ばか、なんで呼ばないんだよ…」

「千恵…あたし…」

「うん、うん、怖かったよね…」

沙織は 泣きながら さっきの 事を 話した。

状況は この期に 説明せずとも 理解できた。

無理矢理 脱がされた衣類。

殴られた跡。

洋服が食い込んで 出来た 跡…

そして

使用済みのコンドーム。

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