嘘恋
別れと始まり
「千恵ちゃん、雄二から聞いた?」

彼女の話しだろう。

「少しね…」

「そうか…。心配かけちゃってごめんね。沙織ちゃんのことは俺も遊びだなんて思ってないし、きちんとするよ。沙織ちゃんにもちゃんとは話してないんだけどな」

「沙織も、あたしも浅野さんのこと信じてるよ」

千恵は、少ししたら 沙織の様子を見に行くと

朋久に伝えた。



…………一方、沙織の家では。

「…マツ、ゴメンね」

「なにが……。何あやまってんの?」

「別れてください」

少しの沈黙。

「全然、意味わからねー、ちゃんと話せよっっ」

「怒鳴らないでよ…、お母さん来ちゃう」

沙織は、かいつまんでだけれど

すきなひとが出来たことを伝えた。


マツは、さっきの男かと 尋ねた。

沙織は全てを話すことには抵抗があったが

話さなければ マツはもっと怒るだろう。

「でも、あたしの片思いだから、あの人には関係ないよ」

「そーゆー言い方がすでに、関係あんだろ」

マツは小さなテーブルの向かい側で、あぐらをかいていたが 両手の握り拳が 震えていた。

怒りや悔しいさ 悲しさで いっぱい。

彼女の

あんな シーンを 見てしまったのだから。

「いつからだよ…」

「1ヶ月くらい前…」

「そんな最近?、なんで…?」

マツからの 疑問符に 沙織は

「マツ、ゴメン。たくさん話しても、答え変わらない」

マツは、立ち上がると 沙織の腕を掴んで そのまま ベッドへ押し倒した。

「きゃあっ…」

沙織は突然のことで 驚いた……

マツは沙織の 両手を押さえて 馬乗りになる。

そして キスをしてきた。
「止めて、マツ」

マツは沙織の声を無視すると

「あいつとやったの?」

「なに?」

「俺には散々、待たせて、あいつにはもヤラセたのかよ」

「…なんで、そんなこと言われなきゃならないの?離してよ」

< 58 / 74 >

この作品をシェア

pagetop