妹なんていらない
「それじゃあ僕、着替えなきゃいけないので失礼しますね」




そう言って結城はサッカー部の部室へと向かっていった。



美波は名残惜しそうに結城の背中に向けて腕を伸ばしていた。



その表情はとても寂しげで、この世の不幸は我にあり、とでも言いたげだった。




「あのな、別に永遠の別れってわけじゃ………」



「………私が結城くんと話す機会なんて滅多にないんだもん」



「同じクラスだろうが」



「………恥ずかしいもん」



「あのな………」



「………無理なんだもん」




そう言って口をとがらす美波。



何故か拗ねてしまったらしい美波を見て、俺は肩をすくめた。



本当に子供だな、こいつは。



とは思うがもちろん口には出さない。



確実に殴られることが予期できたからだ。
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