妹なんていらない
どうやら美波はぼーっとしていたらしい。



俺は少し不思議に思い、美波の表情を覗き込んだ。



頬を染め、うっとりとした瞳で何かを見ていた。



その視線の先はグラウンド。



あれは、朝練中のサッカー部だろうか。



そういや俺もサッカーやってた頃はあんな風にがんばってたっけ。




「…美波?」



「え?

あ、うんうん、私もそう思う」



「いや、何も聞いてねえけど」



「……………」




その反応で、なんとなく察しがついた。



俺は、千鶴に聞こえないように、美波に耳打ちした。




「(結城ってのはどいつだ?)」



「っ!!?」




何故わかった、と言いたげな表情で飛び退く。



いや、お前の反応見てりゃ誰だってわかると思うぞ。
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