妹なんていらない
美波は観念したらしく、か細い声でつぶやいた。




「ゼッケン…十番の人」




ゼッケン十番。



おお、今ボレーシュートをきめたやつか。



今の角度から合わせられるなんてかなりうまいんじゃないか、そいつ。




「ん〜…顔がよく見えねぇな。

もうちょい近くまで行ってみるか」



「ばっ………!」




グラウンドへ向けて足を出したところ、腕をものすごい力で引っ張られた。



美波は必死の形相でブンブンと首を振っている。



その仕草から、無理、絶対無理、と言われているような気がして、思わず引き笑いをしてしまった。




「あ、あのな…

何もお前が行くわけじゃ…」



「む、無理なの…!

見られたくない…」




おい、いろんな意味で傷つく発言だぞ、それは。
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