妹なんていらない
「何だ、だいぶがんばってるみたいだな」



「決まってる。

うちは選手層が薄いからな。
ひたすら練習あるのみ」




そう言って勇人はふっと笑った。



いつもなら軽口を叩いて会話をつなげるところだが、今は状況が違った。



俺は一息入れると、美波を一瞥してから口を開いた。




「サッカー部の一年に結城真一ってやついるよな?」




隣にいる美波が、わー!、と叫んだ。



もちろん俺はそんなことで口を閉じるつもりはない。




「ああ、いるが…

何だ、あいつに用か?」



「ちょっとな。

悪いけど呼んできてくれるか?」



「ん………

まあ、構わないが………」




そう言うと、グラウンドで整備中の一年生達に向かって、勇人はそいつの名前を呼んだ。
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