赤の疾風


【何故これまで、萬天様を殺すような真似を?】


爪で切り裂き殺そうとするなど、正気の沙汰ではない。
一歩間違えれば死ぬかもしれないのに。

これには、邪鏡も困ったような顔をして、答えを返してきた。



【…初めは、我らも本当に萬天様を殺すつもりだった…。
理由はどうあれ、仲間を棄てる者を長には出来ん…。

だが、皆の話し合いの結果、最後の試練として、萬天様の生死を判断したのだ。】


このとき邪鏡は、あの松の下で自分が出した条件を、再度よく思い出していた。



梳菜を救う代わりに天狗の仲間に戻るか。

梳菜を見捨てる代わりに天狗と縁を切るか。



萬天は、幸いにも前者を選んだ。
そのお陰で、今の萬天があると言ってもいい。


< 161 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop