赤の疾風


核心を突かれ、邪鏡は言いづらそうに頭を掻いた。

そして、一息ついてから、まるで言い訳でもするように…


【先代が生きておられた頃は、我ら小天狗も、お考えに賛成していた。
紅蓮山に天狗以外の妖怪は要らぬと思うておった。

……だが、何故だろうの?
先代の死後、その意思を継いだ筈の萬天様が、やたらと反対なさる姿を見て、我らも急に、考えを改めたのだ。

……お優しい萬天殿が、友である炎尾妖狐と、赤い狸を殺せる筈もないしの。】


天狗の長である萬天と、人間の少女が笑い合っているのが見える。


あれを見てしまえば、天狗達だけが存在を誇示することが、とても馬鹿馬鹿しく思えてしまう。

本来妖怪とは、人間のように同族同士で争い合うものでもないだろうに。


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