赤の疾風


手の平で、そっと梳菜の目を覆うと…、


しゅんっ―――


次の瞬間には、一陣の風の音と共に、


「萬天殿……?」



萬天は、その場から姿を消していた。

まるで、風に掻き消えたように。


その時、不思議と梳菜は平静だった。
本来なら、人が一瞬で姿を消すなど、奇怪なこと。

だが、微かに思ったのだ。


萬天なら、それが出来て不思議ではない気がする、と。


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