もう一度 笑って
卒業式
「智世、学校に来ていいの?」

あたしは制服を着て机に座っている智世に近づいて行った

智世はあたしに気がつくとにっこりとほほ笑んだ

「うん、平気
今日一日だけ、おっけーをもらったの
卒業式が終わったすぐに病院に戻らないとだけどね」

「そっか…」

「樹里はどうなった?」

智世が聞きにくそうに質問してきた

あたしは笑顔で、智世を見つめる

「うん、準備は万端!
見合い用の服も買ったし」

「いいの?」

「仕方ないなぁって……逃げ出すチャンスすらないしさ
なんかもう、諦めが肝心って気がしてきて」

あたしは苦笑をする

心配そうに見つめてくる智世を見ていると、あたしの心がちくちくと痛みだした

全てはあたしが悪いんだ

その報いを受けているんだと思う

病気と向き合って闘ってきた智世の大切な人を奪おうとした罪は重いよ

「樹里……ほんと…」

「それ以上、言わないで!
あたしだってわかってるよ
でもどうにもならないこともあるよ
あたし一人の努力で見合いが放棄できるなら、してるさ」

何度も逃げだそうとしても、お目付役に見つかるし

お目付け役の男をあたしに夢中にさせようと思ったけれど、それも失敗

父親なんか私の気持ちを理解しようとなんか思ってないしさ

こうなったら見合い当日にでも、何か仕出かして、相手側に嫌われるくらいしかなくない?

嫌われて見合いを断わって来るように仕向けることぐらいしか

あたしのオツムじゃ
考えられないよ

大丈夫さ
どうにかなる

ならなくても…
あたしが招いた種だ

智世みたいに向き合えば、突破口はできるさ

もしかしたら
見合い相手が、めっちゃ格好良いって場合もあるじゃん?

それに期待しているんだ

きっとあたし好みの格好良い顔立ちであることを祈るのみって感じ?
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