もう一度 笑って
お見合い

愛の逃避行

「はあ」

あたしは隣に父親が座っているのにもかかわらず、大きなため息をついた

ワンピースかあ……

本当にあたしって、ブランド物が似合わない女だ

今朝、父親が用意したスタイリストたちによって、それなりにメイクをしてもらい

それなりも髪もブローしてもらった

普通なら

『わあ、私ってこんなに綺麗になれたの?』って感激するところなんだろうけどさ

鏡で全身を見て、思ったのは…

あたしはセレブな女には程遠いってことだったよ

セレブ育ちなのに、セレブな格好が似合わないなんて最低

別に好きな男に見せるわけじゃないし
適当な見合い…というか夫になる男の顔を見に行くだけだから

気合いを入れる必要なんか全然ないんだ

『逃げるな。助けてやる』

ふと、朝倉の声が耳の中で響いた

なんで?
なんで、朝倉なわけ?

貧乏人に何ができるのさ

何もできないくせに

変な期待をさせるな!

あんたは、智世の騎士であって、あたしの騎士じゃない

あたしは最後まで魔女を演じてやるんだから

余計な情なんかかけるな
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