water song(みずうた)
ミゲルは、わざとらしく溜め息をついた。

「はいはい、わかりましたよ、ミゲルさんは退散します。」

またねー。と手をヒラヒラふると、ミゲルは来たのとは違う方向へと、歩み去って行った。

「全く、あの方はハイン様とは大違いだな…。」

見張りの人は、ブツブツと洩らす。

因みに、この人は、街長の秘書のような立場らしい。

「あの…」

「あ、失礼いたしました。お見苦しい所を…。
えー、お庭はこちらでございます。」

本当は、庭はどうでも良いのだけど、空を見たい。

空だけでなく、中央広場の噴水も確認に行きたいのだけれど。

(それは無理…かな、多分)

チラリと、横を歩く見張りの人を見る。

街長の素晴らしさを語っているようだが、私は興味がない。

こっそりついた溜め息は、誰にも聞き咎められずに、やたらと扉がある廊下へと消えた。
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