water song(みずうた)

02-04.吟遊詩人と酒場

「あの手のタイプは止めても無駄なんだ。一端承諾しといて、どっかで埋めて来た方が安全で話が早い。」

ガルンは、酒場について、席に着くなり真顔で言った。

えーと。

「ゼルドさん?」

「ああ、そうだ。他に誰が居るんだ?」

“埋める”って本気なのだろうか。
真剣な声と深刻な顔で言ったから、本当にやりかね無い。

「埋める?」

「ああ、埋めただけじゃ生温いよな、やっぱり重石を付けて沈めた方が…」

「死んじゃう…」

「殺すのは流石に不味いが、それ位の気持ちでやらないと。」

酒場は、まだ開いたばかりらしく、人が疎らだった。物騒な話をしている私達の周りには人はいない。

♪あの人に伝えて〜

不意に耳に入った歌声にそちらをみやると、一人の男の人が、楽を奏でて居るのが目に入る。

「あれは」

「ああ、吟遊詩人か。リールの歌の方が上手いな。そうだ、リール、お前、歌を唄って金を稼げば良いじゃないか!」

そうかもな。それなら私にも出来るかもしれない。だけど。

「恋歌とか知らない」

大衆に受けるような歌が唄えなければ、それで稼ぐのは難しそうだ。

「じゃ、ここで聞いて覚える…とか」
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