water song(みずうた)
うん、それも有りかな。

本でも有れば良いんだけど、吟遊詩人は大抵、口伝とか自分で作詞作曲するから、本はあまり出回らない。

となると、誰かの歌を聞くか自分で作るしかない。

そう思って、手近な彼の歌に耳を傾ける。

(あれ…?)

なんか…外れてるような…いやいや、そんな事ない、きっとああいう歌なんだ。

「あーもう、台無し。ね、台無し。俺さ、結構もう既に酔っ払ってんのに、それでも解る位ズレてるってどうよ?」

赤い顔をした酒場の客と思(オボ)しき男にヤジを飛ばされ、吟遊詩人の男の人はすごすごと舞台から退場していった。

「あーマスター、どういう事だよ、これ。何であんな下手くそ呼んだわけ?」

酔っ払った男は、マスターに絡み始めた。

「ふーん、ズレてたのか。道理でリールのが上手そうだと思った。」

納得顔で頷くガルン。

上手いか下手かだけに分類されるガルンの世界はとてもシンプルだ。

感想もアッサリ。

それにひきかえ。

「という訳でさ、解る?マスター。俺癒やしを求めて酒場に来たワケよ。なのに、聞かされたのはあれ?何かもっとマシな出し物無かったわけ?」

近くに本人が居るのに、あんまりな言い種。
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