Bitter Chocolate
 「あ…そのお兄ちゃんだから!」

 「あ、そうか…流石に妹をこんな時間に一人で出歩かせないよな」



 俺の視線に気付いた大槻がそう言って否定してくれる。

 その一言で俺の中に突然生まれた嫉妬の駆け出しみたいな感情は綺麗に消えた。

 俺の中で生まれた黒い感情が消えたのが見えたように大槻が笑うと人気の少ない通りへと歩を進めた。


 長い影の乱立する夜道を歩く大槻の背を見送る。

 俺にはその背中がほんの少し周りよりも輝いて見えた。
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