Bitter Chocolate
 「おい、山瀬!大槻が事故って―――」

 「金曜の晩にバイバスの上がり口のところで―――」 

 「轢き逃げだったみたいで病院に着いた時にはもう―――」



 教室に着いて直ぐそんな会話が耳に入る。

 興奮気味に語るクラスメイト、泣き崩れている女子、大槻の席の上に飾られた白い菊の一輪挿し。


 いつもの朝とは違う喧騒に、いや騒然とした「大槻のいない」教室に俺は目の前が真っ暗になった気がした。

 その真っ暗になった視界に浮かび上がるように大槻の姿が過ぎる。

 眩しいばかりの光に囲まれた大槻の桜みたいな笑顔。
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