桃色ドクター



腰にサポーターを巻いてくれる時に、声がとても近くから聞こえた。




「大丈夫ですからね…ヘルニアではなさそうなので、安静にしていれば、すぐに治ります」




こんなに穏やかに話す人に出会ったのは初めてだった。


瀬名仁ノ介、医者になる為に生まれてきたような人。



薬の説明をしながら、瀬名先生は私の腰に手を当てていた。



一番痛い場所ではなく、少し離れた場所。


その手は、ゆっくりと背中に移動し、手の当てられた場所はだんだんと温かくなっていくような不思議な感覚。




幼い頃、母に背中をさすってもらったことを思い出してしまう。


そんな優しい手。




「手当てって言うでしょう。手を当てるだけで、随分楽になるんです。どこか触られているだけで、不思議と痛みもましになったりしませんか?」


目を閉じていた私は、その問いかけに目を開けた。





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