桃色ドクター


「ご主人か彼氏に、こうして背中や腰に触れてもらってください。治れ、治れって念じながら触れることが大事ですから」



デリカシーのない男。



やっと見つけた瀬名先生の欠点。



もし、私に彼氏がいなかったらどうすんの?


実際私は彼氏がいるけど、そんな優しいことしてくれるわけがない。


頼んで断られるくらいなら、期待しない。




「そんな人いません。自分で触ればいいですか?」



純粋そうな先生を少しいじめてみたくなる。





私の質問に、初めて顔色を変えた。



焦ったような表情で、少し困ったように笑う。


一瞬大きくなった目が子犬のようでかわいい。



「すみません…つい、お綺麗なんでそういう方がおられるかと…ご自分で触るのはだめです。腰をひねると良くないので、だめですよ!」




お綺麗・・・


そんなこと言っちゃって。

口もうまいんだよね、プレイボーイは。



お世辞とわかっていても、この歳になるとそういう言葉に飢えている。


ついついニヤけちゃう私に、瀬名先生は言う。




「絶対に無理しちゃだめです!私がいつでもこうして撫でますからね」



悔しいけれど、少しキュンとした。



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