桃色ドクター


撫でますからねって言う「ね」の所で、ちょっと首を傾けて、にっこりと微笑んだ。


こんなにも人に優しくしてもらったことってあっただろうか。



両親以外に、こんなにも気持ちを込めて触れてもらったことがあっただろうか。





9時のチャイムが鳴り、看護婦さん達が動き出す。


私の癒しタイムが終わる。




「家まで送らせますから安心してください。できれば明日も来てください」




瀬名先生は、胸ポケットからボールペンを取り、紙に何かを書き始めた。




言われなくても、明日も来ます。


明後日も来ます。


ずっと来ます。



悔しいけれど、あなたは最高の医者です。


あなたは、嫌いなタイプだけど…あなたの治療とあなたの声は好きです。





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