桃色ドクター


「夜中や、休日に何かあればここへ電話ください。他にも何か心配事があったら、いつでもいいので…明日も迎えが必要ならご連絡ください」



その紙には、ケータイ番号らしき数字が並ぶ。



瀬名先生は、丁寧過ぎる口調で、私との間にある壁を感じさせた。


もっと、タメ口で話してくれればいいのに…なんて思いながら、彼の腕時計を見た。



…ロレックス。




あぁ、やっぱり苦手なタイプ。




内線電話で、さっきの大柄な彼を呼び、私は家へ送り届けられた。




大きな彼に抱っこされながら、ドアを閉める瞬間に「ありがとうございました」と瀬名先生に向かって叫ぶ。



そんな私に、瀬名先生は、口角をあげて微笑みながら軽く右手を上げた。


車と車で挨拶する時のように、流れるような動きで…



私は瀬名先生の別れ際のその仕草と笑顔を忘れることができなかった。










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