桃色ドクター
ベッドに寝かされた後、看護婦さんがやってきた。
腰のサポーターを取り換えてくれる看護婦さんに、瀬名先生は言う。
「また戻って来るから、処置よろしく」
真剣な顔でそう言った後、私の腰にそっと触れて、
「じゃあ、ゆっくり寝ていてくださいね」
またあの顔で微笑む。
ドキン… から ズキン…に変わる胸の痛み。
これ以上、彼を知ると、私は本気になる。
たかが、外科医。
されど、外科医。
私の知らない世界を知っている大人の男。
と、言ってもきっと私とそんなに年齢は変わらないくらいだと思う。
今日初めて知った、目尻のしわと、ひげの存在。
そして、左手薬指の光る物。
私の芽生えたばかりの若葉は、一日で摘み取られてしまった。
なんだかんだ言っても、結局私は昨日から瀬名仁ノ介のことしか考えていなかったんだ。
たった一日だけど、私は恋をしてしまっていたことに気付く。