桃色ドクター
看護婦さんに貼ってもらった湿布がじわじわと腰を冷やす。
でも、私の腰が求めているのは、あの優しい手の温もりだった。
天井の模様を眺めながら、溜息をついた。
ずっと見ていると、天井の模様が猫の顔に見えてくる。
看護婦さんが出て行ったその部屋は、とても静かだった。
遠くから聞こえる瀬名先生の声。
誰にでも優しい先生の声。
医者なんだから当たり前じゃん・・・
私にだけ優しいわけがない。
でも、あの優しい微笑みと温もりを独り占めできる人がこの世に一人だけいるんだ。
そんな幸せな人が…いるんだね。
枕の感触を確かめるように首を動かした。
雅也の顔が脳の中で揺れる。
憎めないあいつ。
私に合ってるのかも知れないマイペースな雅也。