桃色ドクター
車に乗り込もうとしていた瀬名先生は、私のいる方向と逆の方向を見た。
瀬名先生は、首を動かして周りを見渡しながら車のドアを閉めた。
そして、やっと私を見つけた。
黒の国産車。
外車じゃないんだ。
意外に普通じゃん。
「やっと・・・来てくれた・・・・・・」
ため息まじりにそう言った瀬名先生は、一歩私に近付いた。
「瀬名先生・・・」
「平野さん!!遅いですよ」
夜なのに、爽やかな朝日のような笑顔で微笑んだ。
黒のロングコートを腕にかけ、グレーのシャツにネクタイ姿だった。
白衣の下はこんな感じだったんだ・・・なんてしみじみと瀬名先生を見つめた。