桃色ドクター
「送ってください」
また冷たく言った。
瀬名先生は黙ったまま車を走らせた。
瀬名先生は、ため息をつき、そのたびにごめんと謝った。
空は真っ暗だけど、どんよりと曇っていることがわかる色をしていた。
「彼氏と別れてくれよ。好きじゃない彼氏なら、別れて欲しい」
信号が止まると、瀬名先生は口を開く。
ただ優しいだけの甘い医者だと思っていたけど、本当の瀬名先生はとても男らしく思ったことを正直に口にする人だった。
その姿にまたキュンとしている自分に気付いて、泣けてくる。
「私は別れます。でも、瀬名先生は別れちゃだめですよ」