粛清者-新撰組暗殺録-
武田は顔を青くする。

「武田観柳斎。逃亡は死罪…新撰組の局中法度を忘れたか?」

「ば…馬鹿を言え!新撰組の言い分は愚か者のやる事だ!」

開き直ってわめき散らし、橋を引き返そうとする武田。

しかし。

武田はそこで初めて、既に斎藤一によって退路も阻まれている事に気づいた。

「新撰組の言い分は愚か者のやる事か…俺に言わせれば」

斎藤は刀の切っ先を武田に向けた。

「俺から逃げようという行為の方が、よっぽど阿呆だと思うがな」

「く…くそっ!」

斎藤よりも篠原からの方が逃げおおせる確率は高い。

そう考えた武田は咄嗟に斎藤に背を向け、全速力で篠原の脇を駆け抜ける!

しかし!

「ぎゃ!」

すれ違い様、篠原の抜刀した刃が武田の右の脇腹を薙いだ!

「う…うぅ…ぐぅ…う…」

傷口から血を噴き出しながら、それでも逃げようとする武田。

「…惨めだな」

ヨタヨタとよろめく彼の背後で、斎藤は左片手一本刺突の構えを取った。

< 113 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop