粛清者-新撰組暗殺録-
「貴様のような腐った男でも、新撰組の中にさえいれば一端の組長として扱ってもらえたものを…自惚れて一人の力で薩摩や長州に取り入ろうとしたのが貴様の失策」

強く地面を踏みしめる。

「敵前逃亡は士道不覚悟…死ね」

底冷えのするような台詞と共に、斎藤は隙だらけの武田の背中目掛けて突進した!

その切っ先が華奢な武田の体を、まるで豆腐のように貫く!

「うぎゃあああああああっ!」

断末魔の叫びが、竹田街道にこだました。

血飛沫を上げながら、武田はその屍を橋の上に晒す。

「…フン」

斎藤は何の感慨も湧かないといった表情で刀の血糊を拭い、納刀した。

「全く惨めですね」

篠原が斎藤の傍らで呟く。

「これが一度は新撰組五番隊組長と呼ばれた男の末路とは…」

(全くだ…)

斎藤は屍に背を向け、その場を去り始める。

(谷といい武田といい…こんな外道どもが組長の座についているようでは…新撰組も最早長くはないか…)


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