粛清者-新撰組暗殺録-
第七幕
総司は病のせいで毎日のように巡察に参加する事ができなくなってしまった。

体の調子がいい時は任務にも参加するが、それも極僅かな時間のみ。

それ故にその皺寄せは、永倉や斎藤といった優秀な隊士に来る事になる。

その夜も斎藤は志士狩りに精を出して、市中を駆けずり回っていた。

「く、くそっ!」

彼に追われて逃げる志士の一人は、辺りを見回しながら素早く退路を見つけ、何とかして斎藤を撒こうと試みる。

が、市中は最早斎藤達新撰組の庭のようなもの。

どんなに入り組んだ路地を逃げたところで、志士に生き残る術はなかった。

思い余った志士は。

「きゃあっ!」

突然民家に入り込み、その家の娘を人質に取った!

「…やれやれ」

斎藤は刀を抜き、溜息をつきながら志士に歩み寄る。

「動くな!動くと娘を刻むぞ!」

娘の首筋に脇差の切っ先を突きつけてわめく志士。

娘は恐怖に打ち震えている。

「市井の人間まで巻き込むな、阿呆が」

斎藤はゆっくりと切っ先を志士に向け、左片手一本刺突の構えを取る。

そして次の瞬間!

「ぎゃ!」

人質に手を出す間もなく、志士は斎藤の刀に貫かれた。

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