最後に初めまして。
薫は長いメンソールの煙草に火を点け話を続けた。

『あるんじゃない?何も求めない、何も与えないなんてただの気持ちの押し付けと同じじゃない?親が子供を愛するのとは訳が違うでしょ?』

『なら…薫さんは登に何を求めてたんですか?』

『私が登に求めてた物…安らぎと本当の優しさってとこかしら?でも返っては来なかったけどね。貴女には違うでしょ?』

『私には違う?』

『登は貴女にはちゃんと与えてるはずよ。それが何だか貴女にも分かってるはず…違う?なら貴女も登に与えなければ私と同じなのよ。』

『私が与える物って…何が出来るんです。私なんかに…。』

『それは貴女自信しか分からないわ。ただ…登は昔より変わったわ。背負ってる物が軽くなったかの様にね。それが何だったか私には分からなかったけどね。貴女にはそれが分かるんでしょ?』

『そうですね。分かると思います。登の背負ってる物も大きさも…。』

『貴女も同じなんじゃない?何か背負ってて。登にだけ楽させていいの?登に同じものを背負わせたら答えが出るんじゃないの?』

『私の背負ってる物を登に…。でもそれは…。』

『登はあれでも頼りになるわよ。その辺の男よりはね。貴女一度、自分のカラをぶち破ったら?』


薫は古都に背を向け手すりにもたれるようにして遠くの景色を見つめていた。

古都は薫の横に並び、同じ様に遠くを眺めていた。
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