さよならとその向こう側
「……おかしいな?」
悩んでいると、後ろから教授がやって来た。
「神田君、どうした?」
「いや、携帯がないんです。」
そう、無くなっていた。
教授と応接室に入る前、確かデスクに置いたはず。
床に落ちたのかと、辺りを見回したが見つからない。
「自宅に忘れて来たんじゃないか?」
「いえ、そんなはずは。」
確かに持っていたんだ。
指輪の箱を見ながら、携帯で彩夏の番号を探そうとしていたから。
曖昧な記憶ではなく、確実にデスクに置いたんだ。