さよならとその向こう側

あの事件直後、私とおばあちゃんは、この長野に在る叔母夫婦が経営しているペンションに、引越して来た。


それは、世間の目から私を守る為に、叔母さん夫婦とおばあちゃんが決めてくれた事だった。

おかげで、名字も変わった私と、事件を結びつける物は無くなり、誰からも好奇な目で見られずに済んだ。


だけど、おばあちゃんは時々、住み慣れたあの町に帰っていた。


それはきっと、お母さんの消息が分かる何かが無いか気になったからだと思う。

万が一お母さんから連絡が来てもいいようにと、今でも実家は手放さずにそのままにしている。

もう何年も人の気配がない空き家になっているが…。


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