さよならとその向こう側
「うん。ごめんね、言い出せなかったの。本当はあの話、少し違うの。」
「違う?・・・何が?」
志乃はテーブルの上のコーヒーを見つめたまま思いつめたような表情で黙りこんでしまった。
私は相変わらず志乃の言いたい事が分からない。
何だろう、何が違うの?
黙り込んだ志乃を見つめていても、重苦しい空気が流れるだけ。
「志乃?どうしたの?」
志乃が何を悩んでいるのか分からないから、なんて声をかけたらいいのかも分からない。
「ねぇ、志乃?」
ただ、何回も名前を呼んだ。
「・・・志乃ったら。どうしたの?」
すると、やっと志乃が顔をあげた。
「あの日私が聞いた事、全部話すから・・・落ち着いてね?」
志乃はそう言って、全てを教えてくれた。