幼なじみ〜first love〜
「絢音ちゃんが…初めから気に入らなかった。だって、幸せそうで…きっと何も苦しんだことなんてなくて…」




「それは違うよ…」




「何が違うの?蒼くんみたいな人が、そばにいて…神様は…とても不公平…!」




栞が泣き叫んで、俺の服を掴んで離さなかった。




「違うよ…栞。みんな…誰でも傷を持って生きてる。人の心の中までは…他人にはわからないんだから」




自分が辛い時って、人が幸せそうに見えるんだ。


でも悩みのない人なんて、絶対にいない。


誰もが悩んで、それを必死に隠して、明るく生きてるだけなんだ。




「蒼くんみたいな純粋な人には、栞の気持ちなんかわかるわけないっ!」




「…おまえには同情する…だけど、同じことを誰かにしたって憎しみは続くと思う。どこかで終わらせなきゃ…」




自分が受けた憎しみや悲しみを人にぶつけたって、誰も幸せになれない。


自分が幸せになることが、自分の憎しみや悲しみを消す、唯一の方法だから。


だからもう、止めるんだ。自分が幸せになる為に…




「おまえの過去がどれだけ残酷でも、俺はおまえのしたことを許せない…。でも…」




俺は、栞の頭をそっと撫でた。




その行動に驚いた栞は、俺の顔を見上げる。





「でも、いつか許せる日が来るって、信じてる」




俺が微笑むと、栞は涙をぼろぼろとこぼした。




「…ごめ…ん…なさ…い…」
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