幼なじみ〜first love〜
お祭りの会場に着くと、町の人たちで賑わっていた。出店もたくさん立ち並び、焼そばや、たこ焼き、食べ物のいい匂いも漂ってくる。




「うわぁー!人たくさんいるねー!」




人の多さは、毎年なのに。それでもやっぱり驚いてしまう。




カキ氷、たこ焼き、焼きそば、お好み焼き、ソースせんべい、焼き鳥、りんご飴……




歩きながら、出店を眺めてゆく。ワクワクして、気持ちを抑えられない。夏祭りに来ると、今年も夏が来たんだなって毎年そう思うから。




「全部食べたいよぉ…」




あたしがポツリと小さな声で呟いたのに、蒼はそれを聞き逃さなかった。




「絢音…これ以上、太ったらみっともねぇぞ?おまえチビなんだからな…?」




ボフッ…――!


蒼がいじわるを言うから、蒼のお腹に思いっきりヒジ鉄を喰らわせてみた。




「イッテぇ…絢音っ!浴衣着てんだから、おしとやかに振る舞えよ…」




蒼はお腹を押さえながら、顔をしかめる。




「べーだっ」




どーせ、チビですよーだっ!




「おまえら…ケンカすんなや。蒼、金魚すくい対決やるで?」




遊也はフッとため息をつき、呆れてあたしたちをなだめて言った。




「負けねっ」




根っからの負けず嫌い蒼と、大阪からやってきたアツい男…遊也の金魚すくい対決が始まろうとしていた。




「負けたら…うーん。たこ焼きおごりな?」




蒼は得意そうに遊也の肩を組んで笑う。




「負けへんわっ」




とっても真剣な二人の眼差し。たまたま通りすがった幼稚園児たちも、二人の勝負をそばで見守っている。




「よーい、始めっ!」




お店の人の威勢のいいかけ声で、二人の勝負は始まった。
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