幼なじみ〜first love〜
「そんな目して…あの女そっくりね」




ドアの前に立つ、背の小さい中年女性…黒髪のショートヘアで、色白く痩せ細った身体…




「ここには来ないでくれって…言ったじゃないっすか…」




「それがお金を借りてる人間に対する態度なのかしら?」




俺の知ってる限り

昔はこんな人じゃなかった




もっと穏やかで

優しくて




いつも笑ってて…




俺をすごく
可愛がってくれていた




料理が得意で

お弁当も作ってくれた




どちらかといえば

ふっくらした体型だったのに


こんなに痩せ細って…




別人のようになってしまった









絢音の母ちゃん……―――。








この人の人生

幸せ




何もかも変えて

壊してしまったのは




俺の母ちゃんのせいだよ




「絢音が昨日…俺に逢いにきました」




おばさんは、顔色を変え、俺の手首を掴んだ。




「本当のこと…話したの……?」




掴まれた手首が、痛い……




「何も…絢音は知らないままっす……もう…逢うことはないんで…安心してください……」




「……当たり前じゃない」




「話があるなら…近くの喫茶店で聞くんで…」




俺は、ドアの鍵を閉めた。




愛する人の母親まで

苦しめてしまった




母ちゃんの罪は

俺が償うよ




だから絢音……

せめておまえだけは




幸せに……




俺は今でも

おまえを愛してる




好きだよ

死ぬほど…愛してるから




だから

もう二度と逢わない……







―――………サヨナラ。
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