幼なじみ〜first love〜
対向車がすれ違う度に、顔がライトで照らされる。
溢れる涙を拭うことさえしなかった。




ただ…蒼の顔ばかり思い出していた。




もう…本当に終わりなんだ




美々ちゃんから

蒼の過去のことを聞いて




もしかしたら

沙羅と一緒にいるのは




沙羅への責任からなんじゃないかって……




本当はあたしのこと


まだ好きでいてくれてるんじゃないかって……




あたしは心のどこかで

期待して




蒼に逢いに行った……




ずっと知りたかった


あたしたちが

血の繋がった兄妹なんじゃないかってことも……




蒼は否定した




蒼とあたしを

遮るものなんて




何もない……




ただ…蒼の気持ちが

変わってしまっただけ




蒼の好きな人が

あたしじゃない女の子になっただけ……




“いつか…沙羅と結婚する”




蒼にとって大切な存在は沙羅なんだ…




あたしはもう

蒼にとっては




ただの幼なじみ…――。




「……絢音」




遊也の声で、ハッと気づくと、いつの間にか、車は止まっていた。




車の中から周りを見渡すと、そこは遊也ん家のアパート前だった。




「なんで……」




「今日はもう遅いし…俺ん家、泊まってけや…」




遊也の言葉に、少し安心した自分がいた。




ひとりになるのが辛い…




「明日の授業は何限からや?」




「…午後から」




「ほんなら…ゆっくりしてけや」




遊也は先に車を降りて、助手席のドアを開けてくれた。




「おぶったろか…?」




「大丈夫…さっきはちょっとクラッとしただけ…」




「少しは落ち着いたんか…?」




「…うん」




遊也は安心した表情で、あたしの手を引いてくれた。
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