幼なじみ〜first love〜
私たちは、4人でひとつの部屋に泊まる。


ホテルの部屋は、広めな洋室で、薄型の大きなテレビの前に白の長いソファーがある。奥にはベッドが2つ並び、向かい合って計4つのベッドがある。




窓からは、ゲレンデが見える。




私がホテルの部屋に戻ってしばらくすると、蒼も部屋に戻ってきた。




「…蒼……」




「ひとりで先帰んなよ…」




蒼は微笑み、私の頭をポンっと叩いて、ソファーに座った。




「だって、まだ滑ると思って…」




私もソファーに腰かけ、蒼の身体にもたれかかった。




「…どした?機嫌わりぃ?」




蒼の目をわざと見なかった。




「そんなことないよ…?」




「沙羅…?」




蒼は私の頬を軽くつねった。




「…羨ましいなって」




「何が?」




「絢音ちゃんと蒼を見てるとね…羨ましい」




蒼の表情が一瞬、曇ったのを私は見逃さなかった。




「…何言ってんだよ?急にどした?」




「沙羅にも2人みたいな幼なじみがいたらなって…思っただけ」




「別に…………
幼なじみなんて、たいしたことねぇよ…」




もしも…蒼の家の隣に

生まれたのが



絢音ちゃんじゃなくて


沙羅だったら




蒼は沙羅を

好きになってくれたでしょ?




神様は…いじわる




「…沙羅は…何で独りなのかな…」




蒼は私をぎゅっと抱き締めた。




「俺がいるだろ…?沙羅…俺がずっとそばにいるから……」




「…うん……」




蒼の背中に腕を回した。




「…独りだなんて思うな…沙羅」




「…うん…ごめんね、変なこと言って……」




誓って……



今ここで
私に言ったこと



絶対に忘れないで





蒼はもう……


私から

逃げられないよ




絶対に
< 798 / 1,010 >

この作品をシェア

pagetop