幼なじみ〜first love〜
「なぁに?そんな真剣な顔して…」




沙羅は、野菜を切るのを一旦止め、ソファーの前に座った。




「……なぁに?」




満面の笑顔を俺に向ける沙羅。




その笑顔を見て俺は、思い出していた。




俺のせいで、沙羅の父親を亡くした時のことを……




沙羅のたった一人の家族を俺が……奪い去ってしまった




沙羅の声も、歌手になる夢も

何もかも奪って




沙羅は

この笑顔を取り戻す為に




どれほどの涙と痛みを

乗り越えてきたのか




俺はずっとそばで

見てきたはずなのに……




俺はまた

過ちを繰り返そうとしているのか…?




でも…それでも


忘れられない




絢音を愛することが

罪だとしても




俺は絢音を愛したい




「……ねぇ、蒼…来年のクリスマスは2人きりで過ごそっ?」




来年も…いや

たぶんこの先ずっと…




沙羅は俺との

未来を信じてる




未来を信じて

笑う君に




悲しみ、孤独

絶望




俺は沙羅に

与えてしまうんだ




「………ん」




俺は言えなかった。




「蒼?話って…?」




「…あぁ…忘れちゃった…それより…腹へったな」




「すぐ作るね」




沙羅は、立ち上がりご機嫌そうに台所に戻った。




わかってる




いつかは

言わなきゃならない




サヨナラを……―――




俺は、ギュッと自分の拳を握り締めた。




言わなきゃならない


わかってる




けど…苦しい




――…ブーッ、ブーッ…


携帯の画面を見ると、メールが来ていた。




“緑ヶ丘病院に来てくれ。話があるんや”




遊也からのメールだった。
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