幼なじみ〜first love〜
今度は、指で砂に文字を書いている美々の前に、俺はしゃがみこむ。




「美々…顔上げてや」




「やだ…っ」




俯いたまま、砂をギュッと掴む美々。




「美々…辛い出来事をちゃんと乗り越えて、俺な…美々はめっちゃ頑張ったと思うで。」




俺がみんなと出逢った頃、美々は、家にこもりきりだった。




「遊也がくれた言葉、あたしずっと忘れないから…」




美々はやっと顔を上げ、目を合わせてくれた。




「それからの美々は…明るくてなんちゅーか、カッコいい女やったで。きっと、昔からシッカリした子やったんやろな」




「んふふっ…」




涙をいっぱい目に溜めて笑う美々を見て、俺も微笑んだ。




「美々は…バカばっかりやってた俺らにとって姉ちゃん的存在やったな。ケンのことも…尻に敷いてんやろうけど…」




「…遊也…一言多いから」




美々は、俺の頬を左右に引っ張って笑う。




「…イタイでぇ…力強すぎやろ…」




「ごめん、わざと♪」




「ほんまSっ気やな…。まぁケンは、どんなことあっても…ずっと美々を大切にすると思うで…」




「わかってる…遊也…」




「美々もケンをずっと見てやってや…」




「……ん」




「ありがとうな…美々」




俺は、美々の前に右手を差し出した。




「…前にも言ったかもしんないけど…遊也、アンタは、いい男だかんね…」




美々は俺の右手を無視して、俺の体を優しく抱きしめる。




「あたしこそ……ありがとう」




美々は震えた声で、俺の耳元で囁いた。




「ケンが…ヤキモチ妬くで?」




「今日ぐらい…許してよ」




美々…


なかなか素直になれないおまえやけど



ケンは

全部わかってるで



仲良くな…ずっと
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