幼なじみ〜first love〜
「今日は愛空のことで…来られたんですよね?愛空が何か…?」




「あ…はい…。ちょっと愛空ちゃんが心配で…今日はお父様にお話ししたくてこちらに…」




「心配とは…?」




「愛空ちゃんは、本当に優秀ですし、人望も厚く、素敵なお嬢さんです。ただ…しっかりしすぎている…頑張りすぎる所があるというか…それが心配になることがあります」




あたしは、お弁当の一件も話した。




「そうですか…愛空は、顔は亡くなった妻にそっくりで、無茶する所も似ていて…小さい頃からなんというか…子供らしくないというか…僕が頼りなさすぎるのかな…」




「愛空ちゃん、お父さんのことが大好きのようですよ」




「でも…愛空は、僕に心を開いてはくれないのですかね、それが役割なのに…。父の役目も親の役目も果たせずに何をしているのでしょうか、僕は」




「そんなことありません、愛空ちゃんはお父様がそう感じることを一番恐れての行動です。そんなことをおっしゃったら愛空ちゃん悲しみますよ」





「では僕はどうすれば……」




「私も答えが出ないので、今日お父様に会いに来ました。…ただ、お父様と話してみて思ったのですが、たまには愛空ちゃんの前で弱い部分を出してもいいのでは?お父さんが完璧でいようとすればするほど、愛空ちゃんも完璧でいようとするでしょうから。たまには…どうですかね?」




「完璧な父親なんて、ほど遠いと思っていましたけど…愛空は僕を認めてくれているんですかね…」




「子供たちは大人が思っているほど、子供じゃないです。大人たちのことをしっかり見ています」




「本当にそうですね…」




「愛空ちゃんが5才の時のお話をしてくれました。その日以来、愛空ちゃんは泣かないと決めたそうです…」




「僕が…初めて愛空の前で泣いた時…ですね…」




「私なんかが偉そうに言える立場ではありませんが……」




「いえ…絢音先生のおっしゃりたいことは、よくわかりました。今日は、わざわざありがとうございました」




お父さんは深く頭を下げていた。
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