幼なじみ〜first love〜
「絢音先生…」



「……はい」



「幼い頃は、ただ無邪気に好きと言えた。…大人になるということは、諦めることも多い中で、本当に大事なモノだけが心に残るのだと思います」



本当に大事なものだけが、心に残る。



「その大事な部分を大事だと認識して、それを守るために行動する、それが大人になるということなのでは?もちろん責任や、良識も常識も大切ですが」




大事なモノを

大事だと認識する…



「ただもし…迷っているのなら、これだけは、言わせてください…」



「…何でしょうか……」



「逢いたい人に…いつでも逢えるのは…とても羨ましい。僕が妻に逢うというのは、とても難しいことですから…」



「桜木さん……」



「ただ僕は、想いは目に見えない何より大切なものだと思っています。そう妻に教えてもらいました」



「本当に素敵な奥さんだったんですね…」



愛空のお父さんは穏やかに微笑んだ。



「妻と僕も離れている時間がありました。空はどこまでも繋がってると教えてくれました。妻は亡くなってしまいましたが、彼は生きてる。大人になることは諦めることだけではないですよ?」



「…そうですよね…。なんか…答えをもらえたような気がしました……」



「この空の下で生きてるんです。不可能なことなんて何もない。いつでも逢いにいけるんですから…」



涙を止められなくて


でも愛空のお父さんの瞳の中にも



涙が溢れていた



「…大切な人を失うのは…とても…とても哀しいことなんですよ……」



「…桜木さんに話して、よかった。本当に…ありがとうございました…」



ねぇ…愛空。

本当に素敵なお父さんとお母さんだね。



愛空って名前も。お父さんとお母さんが愛し合った証だね。


先生ね、すごく感動したよ。




あたしはずっと

大人になるって…
何だろうって…



幼い頃から問いかけてた



答えを知れた気がした
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