線香花火
「どうして泣いているの?」

僕はまだ君の名前も知らないけどつい無意識の中で出た言葉だった。

君は、涙を拭いながら
「なんでもないよ。大丈夫。心配しないで」と僕の目の前に立って言った。
近くで見てもとても綺麗で華奢だが、芯の通った声はどこか力強さを感じた。

「あなた名前は?」

その言葉にふと我に返り
「僕の名前は、翔太。佐藤翔太。友達は翔って呼ぶからみんなフルネームを間違えて覚えてるんだよね。君は?」

「私は美央。松下美央。美央って呼んでね、翔くん。」


美央との最初の出会いでこの夏の物語はここから始まる。
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