女子高生夏希のイケメン観察記
「極秘組織の名称が知られるようになっては仕舞だな」

殿が出て行くのを待ってから、伊達さんは苦いものを噛み潰したような顔でそう言った。

私は知りませんでした、と言ってあげたかったけれどフォローにならない気がして黙っておいた。

だいたい、それどころじゃない。

……うちの母親は忍者なの?

もう、わけがわからない。

「巫女さん、免許持ってます?」

巫女さんは私の問いに小首を傾げた。
艶やかな黒髪がさらりと揺れる。

「持っているけれど、運転はしないほうがいいって皆に言われているわ」

「じゃあ、殿に運転してもらってもいいですか?
 伊達さんを連れて、病院に行きたいんです」

ふぅ、と、巫女さんはため息をついた。

「シロちゃん。気持ちはわかるけど、トウくんはいたって正常よ。
 ただ、霊が憑いているってだけで、ほかには何も問題はないわ。
 現代医学の入る問題じゃないの」

「わかってます」

……だから。
  うちの母親は原因不明の病だと診断されてしまったのだ。
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