女子高生夏希のイケメン観察記
さすが、一日の大半を鏡を見て過ごす男。
そのポーズはうっとりするほど決まっている。

「言っておくが、千崎。
 俺以上のイケメンなんてこの世に存在するわけがない」

愛でも囁くかのように煌かせた瞳で、ナルシズム全開の言葉を吐く。

……よくこれで教師になれたわね。

彼と知り合った生徒、全員が一度は抱くであろう感想が、私の胸にも去来してきた。

もっとも、なんだか彼を教職から下ろすとこの学校には霊がはびこる、なんてまことしやかな噂もあるみたいなんだけど……。

「そんなの、探してみなきゃ分からないんじゃないですかっ」

っていうか、その思い込みはなんなんですかっ!
頭大丈夫ですか?
人として、よくこれまで生きて来れましたね?

心の中だけで暴言を吐く。

言いたい言葉の大半を飲み込んだのは、これでも一応私が生徒で彼が教師だからだ。

「ほう」

と、ナルが目を眇める。
きっと、この目の細め方にすら、何かしらのルールがあるに違いない。

そう思わせるような、完璧な目の細さ。
私の心臓は、恋心無関係にキュンと疼いてしまう。

「じゃあ、俺以上のイケメンを観察してくるんだな。
 それが出来なきゃ、二学期中お前には俺の専属カメラマンになってもらう」

びしり、と。
ナルの人差し指が私の真正面に突きつけられた。

「いいですよ、それでっ」

思わず啖呵を切ってしまった。
……それが、私の夏休みの宿題。

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