封印せし記憶
自宅


誰もいない家。
それは1人でいるにはあまりにも大きすぎた。

静菜と別れた和弥は、まだ明るい時間にも関わらず、どこかに行く気にもなれず自宅へと帰宅していた。


和弥の両親は帰って来ない。
6歳年上の兄は、寮のある進学校に入学して以来、帰ってくることなど皆無に近い。

家族崩壊。
そう表現するべきか。

両親は連絡を取り合っていないらしい。
双方から毎月振り込まれる生活費で和弥は金に困ることはない。


いつから両親は帰って来なくなったのだろうか。
和弥は知らない。
気付いた時には、両親が家にいる事などほとんどなかった。

特に父親の顔を見ることなど月に数回。
母親は週に数回は帰ってきていたが、それこそ帰って来ない方がいっそ楽だったかもしれない。
そして顔を見なくなってからは1年近く。

和弥が9歳の時に高校に入学した兄は、それ以前まではそれなりに面倒を見てくれたが、やはり兄もこの家にいる事が苦痛だったのだろう。
高校の寮に入ることで逃げ出したのだった。


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